- 前間孝則
- 講談社+α文庫
- 新本
またもや自費購入の文庫本。本は買い始めると止まらなくなる。
んで。以前から読みたいと思っていた戦後唯一の国産旅客機に関するノンフィクション。同じく講談社+α文庫で出ている『戦艦大和誕生』以来、久しぶりに読んだ前間孝則は丁寧な取材をしてた。ただしノンフィクションライターにままあることだが、文章力はちょい不満。インタビューで聞いた発言がそのまま(としか思えない文で)活字になってるので誰の発言だか非常にわかりにくい。あと国内の出来事は昭和、海外は西暦しか書いてないから時系列を把握しにくい。たまに主語が曖昧になったり指示語がわかりにくい箇所もあった。補完できないほどじゃなかったけど。
上巻は開発開始から初飛行の直前までで、戦後の航空禁止を乗り越えつつある技術陣がアツい。基礎研究を担当した戦前戦中の大御所設計者5人のうち川重の土井武夫を除く4人がほとんど活躍しなかったのは残念だった。
- 吉岡忍
- 新潮文庫
- 新本
久しぶりに自分で買った文庫は大好きなJAL123便だ(不謹慎)。乗員、乗客、家族、日航社員、警察、自衛隊……みんなが極限に近い状態でがんばる状況が堪らん。
んで。副題が「日航123便事故全記録」だけに、判明している事実のみが淡々と続く。なかなかの迫力。さすが講談社ノンフィクション賞受賞作だ。そんな賞、聞いたこともないが。人間ドラマも読めたけど、個人的にはハイドロ全滅後の機体をどう操作してどう動いて墜ちた、というのがわかりやすく説明されていた点を高く評価。でも圧力隔壁の修理については図がないもんだから全然わからん。惜しい。
もう18年前の事故だが、俺の中ではまだまだ風化してないぜ?
- 杉山隆男
- 新潮文庫
- 借り物
兵士シリーズ第2弾も店の棚にあったから強奪してきた。
んで。今回は著者のF-15体験搭乗をきっかけにして花形職種ファイターパイロットの世界に迫ったような感じ。ついでにメディックとか整備とかもちょこちょこ。飛行機への憧れだけなら俺もけっこう負けない自信があるけど、これ読んでパイロットは無理だと改めて思った。メディックはさらに無理。実際に小松でメディックの人を見たことあるが、あれ化け物だよな。そういうオーラが漂ってた。絶対無理。航空自衛隊怖い。
著者の知識は相変わらずド素人並。こんなんでF-15に乗れるなんて納得いかない。俺も乗りたい。
- 杉山隆男
- 新潮文庫
- 借り物
ずっと読まなきゃと思っていた本がしれっと店の棚にあったので思わず強奪。
んで。杉山隆男の兵士シリーズ第1弾。幹部レンジャー、護衛艦乗り、サイト、PKOと陸海空自を一通り取り上げて、自衛官の意識に迫ってたような雰囲気。共感できた部分や勉強になった点も多かったけど、出てくるのが花形職種ばっかりなのが微妙。格好よすぎる。これが自衛官一般の姿とか思ったら間違いなんじゃないかなぁ。あと、実情にそぐわない記述もちらほら。例えば自衛隊のパンフレット通りに全員が一選抜で昇任できちゃいそうなことを書いてたりね。マニア的には、こういう細かいとこにも気を配ってほしかった。
でも自衛隊ネタは、もうそれだけで楽しめる。次も兵士シリーズの予定。
- 服部省吾
- PHP文庫
- 借り物
ここからしばらくミリタリー系で攻める予定。まずは店に入荷された本の中から発見したこの本から。
んで。表紙のF-15に期待しつつ読み始めるも、すぐに違和感。「機体のそばへ行き、ヘルメットを翼の上に」とか言ってる。15なら翼には届かない。F-4EJ? と思ったら単座の様子。マルヨン? と時代を遡っていった結果、F-86Fに落ち着いた。それより後の機体には乗ってないみたい。ハチロクって朝鮮戦争時代のガンファイターだろ。今さらそんな古い戦い方など要らんよ。著者の選民意識みたいなものも感じられたが、ハチロクの訓練で自慢されてもねぇ。
それにしても、表紙の15は一体……。
- 宮部みゆき
- 新潮文庫
- 借り物
本日2冊目もこれまた宮部の時代物。サクサク読める。
んで。全4本収録の初期短編。全体にオチに至る過程が急転直下というか性急すぎる感じだった。干支の金細工で騙されちゃう「師走の客」は、以前どこかで見たような気がして、ひとしきり悩んだ結果、NHKのテレビ版だったことを思い出した。正直テレビのほうが面白かったな。
後半2本は霊験お初の初登場作品。1話目はただのプロローグという感じで盛り上がりに欠けたけど「騒ぐ刀」はそこそこ。霊能者トンデモ話なんだけど面白く読めちゃった。筒井の七瀬に通じる。ゴメン褒めすぎた。
- 宮部みゆき
- 新潮文庫
- 借り物
読みたいと思っていたらなぜか店に入荷されたので真っ先に強奪。買う手間が省けた。
んで。これは山本周五郎賞なミステリー。自己破産とか戸籍の偽装とか、リアルにありそうでなさそう。ジワジワ真相に近づいていく快感で、読み始めたらもう止まらん。ミステリーはあんまり好きじゃないけど、これは最後まで面白いと思った。例によってちょい不自然な描写があったりしたけど、それも宮部流の愛嬌ってことで許す。
さて宮部の現代物、次は『理由』あたりを読みたい。また都合良く入荷されることを期待。
- 池波正太郎
- 文春文庫
- 手持ち
そろそろ泣きが入ってきた池波処分シリーズ。やっと忍者から解放された。
んで。最終巻は織田の武田攻めから始まって信長死亡で終了。中盤以降、文章壊滅。接続詞ぐちゃぐちゃで前後がつながらない場面が多発した。つまらない話なんだから、せめて文章くらいちゃんと書けよなぁ。結局、実在武将エピソードは読めた。対して忍者エピソードは悪夢に近い。史実の流れに池波忍者が活躍する余地はない。それでもこの『忍びの風』は、背景になってる時代の力で他の忍者シリーズより読めたかも。忍者が出てこなければもっとよかった。←主題の否定
それにしても7冊連続で池波忍者。よく耐えた。
- 池波正太郎
- 文春文庫
- 手持ち
もう勘弁してくださいの池波処分シリーズ。あまりにあまりで時間がかかった。
んで。第2巻の見所は長篠合戦。この時代は素材そのものが面白い。長篠城攻めでの鳥居強右衛門(捕まって磔にされながら援軍は来るとか叫んじゃった人)のエピソードなんて池波が書いても面白いんだから相当なものだ。問題は池波創作である忍者に尽きる。史実→楽しい。池波忍者→邪魔。池波の忍者には魅力がない。ストーリーにも魅力がない。文章力もない。ただ書いただけの超ご都合主義。
これはもう読者を馬鹿にしてるとしか思えない。腹立ってきた。
- 池波正太郎
- 文春文庫
- 手持ち
諦めの境地に辿り着いた池波処分シリーズ。タイトルの通りまたもや忍者物。
んで。なんかまた於蝶が準主役で出てきた。味方されると必ず負けるという、キャラとしての魅力に乏しい於蝶を使い回した時点で駄作であることがほぼ運命づけられた。第1巻は姉川から高天神にかけての時代。ここまでは一応読めた。戦国末期という時代的に有名な戦いやエピソードが多いことに助けられて。むしろこれだけ面白いネタが揃ってる時代なのにこの程度しか書けないことに驚きを隠せない。
全3巻……先が思いやられる。